チャンピオンと1位の違い

成長段階にある人間に無理なことをさせることにより体がいびつなまま成長することは好ましいものではない。野球において小学生にカーブを投げさせないとか、投げ込みを禁止するというのは理に適った話である。

フィギュアスケートにおいてもそのような理論構築がなされており、オリンピックの競技において年齢制限がある珍しい競技となっている。今年度よりシニア(ジュニアに対比する表現なのでこう書かれているが何か違和感を感じたりもする)に参加する運びとなった浅田真央選手は年齢制限に引っかかるが故に来年のトリノオリンピックには参加できないこととなっている。

しかしながら、現実はそのような制度をあざ笑うかのようなこととなっている。これまで女王の名を恣にしてきたスルツカヤ選手を差し置いて、いまや凄まじいまでのタレントを開花させている浅田選手は新たな女王とならんとしているのである。

浅田選手が年齢制限でオリンピックに出場できなかったとなれば、女王不在のオリンピックとなりかねないわけであり、世界一を賭けて戦うという大会が世界一を欠けて戦う大会になってしまいかねない。この状況から、西側諸国がボイコットしたモスクワ、東側諸国がボイコットしたロサンゼルスオリンピックにおいて、金メダルを取った選手に対して、不参加であった国のマスコミが「うちの誰々が参加していない大会で1等賞を取ったところで世界一といえるのであろうか?」という反語的な締め括りをしていた事を思い出すのは訳も無いことである。

ルールを曲げないと参加できないほど浅田選手が素晴らしいというのは嬉し過ぎる誤算であろうことだし、参加をしないことは浅田選手の今後のことを考えれば医学的によろしくないといっているわけだから参加しないほうが良いとは思う。
しかし、ほかの選手がオリンピックで金メダルを取ったとしても、それはボクシングの「1位」同様にチャンピオンへの挑戦権の優先順位が1位であることに過ぎないことに似てきたりはしないであろうか?